軽度発達障害児の母

札幌円山公園

生後7ヶ月検診時に発達の問題を指摘され不安な育児がスタートしました。2歳の春、転勤先の札幌の児童相談所で突然の障がい告知を受けます。「表出性言語障害」という診断でした。ただ言葉が遅いだけ、歩き始めるのが遅いだけ。男の子って大抵遅いものよ、という周囲からの言葉を信じたかったけれど、正式な障害児認定を受けました。 子供の将来の不安。健常児に産めなかった自分を責めたてる日々。2歳になっても「あーあー」しか言葉が出ない。公園に行ってもずっとハイハイで移動する息子を周囲の人々は怪訝そうに見ながら私たちの側から離れていってしまう。たったひとりのお友達も作れずに、ずっと寂しい思いをしていました。

初めての札幌の地でたった二人ぼっちでいるしかいなかった時、あまりにも悲惨そうな私に声をかけてくださった札幌大谷第二幼稚園の園長先生から「朝、園児が登園してくるまで毎日遊びにいらっしゃい」と声をかけていただきました。毎朝幼稚園にお邪魔し、息子はおもちゃや遊具で遊ばせていただき、私は先生からたくさんの励ましのお言葉を授かりなんとか生きていました。この幼稚園で出会った嬉しいことを今も胸に抱きながら毎日を送っています。

エピソード1(寄り添うこと) 幼稚園に遊びに行かせていただき、時にはどんぐりクッキーをご馳走になったり、息子の遊ぶ姿を撮って素敵なアルバムを作ってプレゼントしてくださったり、私たち親子をとても大切にしていただき、登園してくる子供達も息子を可愛がってくれました。「Tくん、何がしたいの?」「あーあ」「ん?わかんないよ」「あーあーあー」「???」毎日こんなやりとりが続き、障害児を構ってくれている園児達に対して母は申し訳なく肩身の狭い思いを抱いていました。ある朝、息子といつも遊んでくれる女の子のお母様に「息子は言葉が出ないので何を喋ってるかわからず、お嬢様も疲れてしまっていませんか?なるべくお邪魔にならないように気をつけます」という具合に感謝の気持ちと一緒に謝りました。お母様は「Tくんには心から感謝しています。娘に何を教えたわけでもないのに、困っている人に自分から手を差し伸べ寄り添う心が育っているのを嬉しく思っています。食事のときはいつもTくんの話ばかり。「今日は◯◯ができるようになったよ。Tくんの言いたいことがわかったよ」という話をしてくれているのだとか。「Tくんと出会わなければ心を育てる機会にめぐり会えなかった。だからTくんにありがとう。と言いたいです。」と。

エピソード2(笑顔でいること) 「言葉がなくたってTくんの笑顔はすぐに100人のお友達ができる力を持っていますよ」園長先生は私たちが札幌を離れる時にこんな素敵な言葉を贈ってくださいました。 笑顔の力を信じて生きていこう。そう思わせてくれた大切な言葉です。 ・・・ 3歳で東京に戻り通った幼稚園でも同じように息子を大切に扱っていただきました。息子の初めての言葉は幼稚園にお迎えに行った時に発した「ママ」でした。先生もクラスメイトもお母様方も泣いて喜んでくださったのを鮮明に覚えています。

しかし、小学校に入学した途端「いじめ」にあいました。息子は「ガイショウ」と呼ばれ、石を投げられたり、犬の糞をつかまされたり。自宅にはゴミが投げ込まれ、ご近所さんには引っ越して欲しいと言われる。「息子は毎晩、僕は死ななきゃいけないの?」と狂ったように泣き叫んでいました。社会の役に立つどころか迷惑な人間を生んだ母。税金の無駄遣いをする子供と言われ、私は生きていくことに自信をなくしてしまいました。常に周囲の差別や偏見にさらされ、家庭は崩壊し私はうつ病重度を再発症し入退院を繰り返していました。息子をおいて命を絶つことなどできるはずもなく、せめて家族だけでも安心していつも笑顔で暮らしていけるように変わりたい。そのためにもにまず自分が笑顔でいなくては。そんなことを考えていたのが2014年までです。

私を苦しめる全てのコトをリセットしたい。まず生活基盤の家の中をスッキリさせよう!と思い立ちました。外で受けるストレスを癒す場所の家ではいつも笑顔でいてほしい。そんな風に思いました。
ネットで最短で完璧に片づけられる方法を探していたところ、偶然「こんまり流片づけ講座」が翌日近所で開催されるという記事を見つけ、これも何かの運命かと思いすぐに申し込み受講しました。講座では「こんまりメソッド」による片づけ術を座学で学び、課題は「こんまり流で自分の片づけを終わらせる」というもの。それなりの講習費も支払っていることもあって、真面目に課題の片づけを始めました。

片づけに3ヶ月の時間を要しましたが、片づけ途中で「あれ?私は鬱重度だったっけ?」「あれ?最近息子が泣いていない」「最近明るい話題が増えてきた」とそんなことに気づきます。のちに振り返ると、いじめる側の子供達や、辛い言葉を投げかける大人たちに対して、怒りなどが消えてなくなっていることに気づきます。
きっと彼らのバックグラウンドには、私と同等かそれ以上の私が知り得ない辛く苦しいことがあってのことだったのだろう、とそんな風に思えるようになりました。

人に寄り添うこと、寄り添ってもらうこと。 他人を信じ、自分を信じること。 他人を許し、自分を許すこと。 そして、いつも笑顔でいることで、人生はときめき、輝き始めるのだと思うようになりました。 そのきっかけになったのが「こんまりメソッド」だと思っています。

全ての人が私と同じ軌跡をたどるとは思いませんが、こんまり流片づけによって、単に部屋が片づくだけでなく、心の中も片づけることで全てが整ってきます。 世界中の人々が住まいを片づけ、心を片づけ、理想の暮らしをスタートさせたなら、きっと差別もいじめもなくなり戦争も地球から消えてしまうと信じています。


(2021.8:6記)
Photo:
札幌円山公園
富良野「ファーム冨田」
(娘小2・息子2歳)